今回は、フィンランドスタディーツアーを”8度”も企画し、
多くの参加者の方にフィンランドの教育と魅力を伝えている高坂翔輔さんにインタビュー!
世界最先端の教育といわれるフィンランドでは、
子どもたちにどう向き合っているのでしょうか?
高坂翔輔さん
かもめ大学学長。フィンランドスタディツアー主宰。熊本を拠点に活動する塾講師、コーチ、ツアーガイド。1981年生まれ。2014年よりフィンランドの教育機関を見学するスタディツアーを企画及びガイドをしています。Perfumeと欅坂46の大ファン。
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「フィンランド8回目の学びとは?」
藤代:フィンランド帰りのたかさんをお迎えして、毎回恒例の対談です!
高坂:そうだよね、帰ったらふじしーに話に行かなくちゃ思うようになってるもん(笑)
藤代:僕は何回もフィンランドの話を聞けてとっても嬉しい!まだフィンランドに行ったこともないのに何回も行った気分になってるよ。本とか書いたりとか、講演会するときとか、行ったことないくせに「フィンランドでは…」みたいなことを語っている自分が少し恥ずかしい(笑)
高坂:いいじゃんいいじゃん(笑)
藤代:たかさんの言葉をそのまま借りてね。さて、今回は何回目だっけ?
高坂:フィンランドのスタディツアー自体は8回目。
藤代:すごいよね、8回って。
高坂:こんなにやるとは当初思っていなかったよ。
藤代:熱も冷めないというところも凄い。それは行けば行くほど知りたいことが増える感じなの?
高坂:知りたいこともあるし、一人でも多くの人と共感したいということがある。同感してもらわなくてもいいから、共感。共に感じて何を思ったか、お互いに話し合いたい。
藤代:なるほどなぁ、今回は何かテーマがあったんだっけ?
高坂:うん、去年は現場で先生をやっていたから、フィンランドの事例から、教育者として何が出来るかを考えたいなと思ってたの。
藤代:教育者って何か違いがあるの?
高坂:キャリアを通じて、ずっと教育に携わってきたというのもあるし、先生という部分もあるし。でも、教育者って先生だけとは限らないよね。会社だったら上司と部下の関係もあるし、家族だったら親と子どもかもしれない。もちろん学校だったら先生と生徒とか。教える立場、育てる立場の人たちは様々な人たちがいるわけで。そういう視点で抽象化したかった。システムそのものを真似することは難しいと思っているから、日常でできそうなヒントを得たいし、もっと言語化したというのがあったかなぁ。
藤代:今回はゴールデンウィーク、日本では元号が変わるゴールデンウィークにみんなで行ったんだよね。
高坂:そうそう、元号が変わるタイミングで日本に居ないという(笑)
藤代:良いんじゃない?(笑)
高坂:良いのかなと思いながら行ったんだけど。
藤代:参加者の人たちは学校の先生が多かったの?
高坂:ちょうど半分、学校の先生だったよ。
藤代:みんな行けてよかったみたいだね。
高坂:そうだよ、担任の先生をしている人たちにとっては、学校を一日もお休みをしなくても良かった。後にも先にも10連休ってなかなか無いんじゃないかと。
藤代:毎年作って欲しいよね。お休み。
フィンランドの教育者が考える「プロフェッショナル」とは?
高坂:今回は、フィンランドの事例から「教育者として何が出来るか考える」がテーマだったの。どちらかといったら、フィンランドのあり方に触れたくて。そういうテーマで行ったきたんだよね。
藤代:今回8回目で、いままではどんなテーマでやってきたんだっけ?
高坂:いままでは「起業家精神はどうやって身につけているか」とか。あとは人生をテーマにしているときもあって、生まれるところから亡くなるまで、どんな関わり方をしているのかもう少し広い範囲で。だから介護施設に行った年もあったんだよ。
藤代:フィンランドの人たちがどのように生きるということに向き合っているか。
高坂:そうそう。Lifeをテーマにした回もあったし。
藤代:最初は教育ど真ん中みたいな、どういう教育しているかみたいなことが多かったよね。
高坂:そうそう!だから、結構インタビューを沢山した今回。生徒たちにもしたし、先生たちにもしたし、校長先生にもしたし。それぞれの立場の人に「どういう先生がいいと思う?」ということをすごい聞いてきた。
藤代:なにか印象に残ってることはある?
高坂:あった!こういう人たちのことを彼らはプロフェッショナルだと呼んでいるだなということがよく分かった。
藤代:共通のプロフェッショナル像があるんだ?
高坂:ある。子どもたちにも、実際の現職の先生たちも、校長先生も。そして外部機関というか、その人たちも、プロフェッショナルってこういう人たち!というもの。
藤代:共通なの?
高坂:見事に。よく聞いていると、同じこと言っているよねって。求めていることも、そうであって欲しいという部分も。
藤代:そうありたいというのも?
高坂:うん、みんな共通点がある。
藤代:それってすごくない?
高坂:すごかったよ。みんな同じこと言ってない?って思って。
藤代:それは、国としてアプローチをしているの?「プロフェッショナルとはこういうものだ」って。これを聞いてくださってる人は「早く答えを教えて!」と思ってるかもしれないけれど、もう少し聞かせて(笑)
高坂:早く言ってよって、プロって何なのって(笑)
藤代:たかさんから見て、どうしてそれが培われていると感じた?
高坂:そういう人たちが教育に関わらず、とても多い国民性かもしれない。
藤代:というと?
高坂:仕事に対しての取り組み方について、みんな共通認識を持っているし、そうやってしてもらって育っているから、受け継がれているというのもある。でも、こんなにプロフェッショナルという言葉を聞いたのは初めてかな。耳に届いていなかっただけなのかもしれないけれど、どこ行ってもプロって言うなと思って。
藤代:例えば「どういう先生がいいと思いますか」って聞くじゃない?そうすると、プロフェッショナルとは、みたいなことが返ってくるの?
高坂:そう、プロフェッショナルとしてこうあるべきみたいなことを、中学校2・3年生くらいの子が言うし、先生たちも言うし、校長先生もプロとはみたいなことを言ってたんだよね。すごく印象的だったことのひとつ。
藤代:アマチュアとプロフェッショナルの違いみたいなのは彼らはどういうところで感じているんだろう。それが答えなのかもしれないけれど。
高坂高坂:そうだね、それが答えだよ。彼らが言うアマチュアということなのか分からないけれど、彼らがいうプロフェッショナルとは「相手の話をよく聞いていて、それに対して答える」ということ。とてもシンプルで、そのままなのだけれど、相手のニーズをちゃんと聞いて、それに対してちゃんと提供できているかかどうか。
藤代:それがプロフェッショナルだと。
高坂:そうそう。生徒が求めているのも「どんな先生であって欲しい?」と聞くと「話をよく聞いてくれる人」と答えるんだよね。いろんな答えを聞いたんだけど、ある子は「一人ひとり学びたいこと、ニーズが違うからそれを知った上で授業をして欲しい」って言っていたんだよね。
藤代:グサッとくるね(笑)
高坂:はい、と思いながら聞いていたよ(笑)他には「生徒の中にもいいアイデアを持っている子がいるから、だから生徒の話を聞いて欲しい」と言う子もいたかな。
藤代:先生よりいいアイデア持っているかもしれないよって。
高坂:うん。だから「話を聞ける人であって欲しい」って。話という点でもう少し深くいくと、中学校2・3年生にも聞いてみたんだね。「話しが聞ける人と、話しが聞けない人の違いって何だと思う?」って聞いたら「それはパーソナリティーの問題じゃない?」って返ってきたんだ。性格的なものでしょって。「話を聞こうと意識している人か、自分が沢山話したいと思っている人かの違いじゃない」って言う子もいて、そりゃそうだとしか言えないなと思いながら聞いていた。でもね、なるほどなと今回思えたことがあって、先生として話を聞こうとしっかり思って、自覚しているつもりではいたの。だけど大切なことは、聞く側が「聞いているよ」という自覚だけではまだ足りなくて、その話をしている人が「この人は話を聞いてくれている人だ」と認識しているかどうかがとても重要で、こっちは聞いていると思っていても、この人は話聞いてくれていないと感じていたらダメってこと。
本当に聞いているか?
藤代:携帯触りながらでも、聞いちゃうこともあるもんね。
高坂:この人はよく私の話を聞いてくれていると思っているかどうかが、とても重要なんだなということが彼らの話を聞いてすごく思ったんだよね。そうじゃないと、それに対して「あー分かった分かった」と言って出しているものが、「それじゃないんだけどな」って思っていたら、聞けていないんだよね結局。話をしたい人というのはたくさんいるとおもうんだよね。だけど本当の意味で話を聞いてくれている人がいるかというと、少数派だと思うわけよ。
藤代:たしかにね。
高坂:といういうことを考えると、教育者に関わらず、どんな職業においてもちゃんと話を聞けている人になると頭一つ抜けると思うんだよね。
藤代:たしかに。
高坂:相手のニーズを聞く前に、提案する人っていっぱい実はいると思うんだよ。
藤代:聞いているふりしたりね。
高坂:そう、まだ求めていないんだよなって感じる。まずは話をたくさん聞いてあげられるだけで、とても良いんじゃないかなということがすごく思ったよ。
藤代:それは、学生の子たちの立場から話を聞いて欲しいなと、私たちにだってアイデアがあるし、私たちだってやりたいことがあるから、先生が情報提供をしてくれるのも嬉しけれど、聞く時間も作って欲しいというのが彼らの考えだったわけでしょ。それがプロフェッショナルであると。で、先生たちもそこがそう思っているわけじゃない。
高坂:思ってる。
藤代:それはどうしてだと思う?生徒の話を聞くことがとても大切であるという。
高坂:そうやって教員養成の過程を踏んできていることもあるだろうし、校長先生も「生徒の話を聞くことが先生の役割です」って言ってる。先生たちの中で共通の見解としてちゃんと持っているんだなというのと、共通理解を取るためにしっかりコミュニケーションを取ってる。職員室の雰囲気やそれぞれの立場の人の話を聞いていると、とても浸透しているんだなというのが理解できたんだよね。
藤代:なるほどね、まず観察する時間が沢山あるんだもんね。相手が何を求めているかというのを教育実習か何かで、ずっとやるんでしょ?
高坂:そうそう、教育実習でやることとしていきなり授業するだけじゃなくて、まず教室の様子をずっと観察する期間を設けていたりするという話は以前にもしたよね。
藤代:それじゃあ相手がどう思っているのか、どう感じているのか、何に興味を持っているのかということを知らないとだめだよね、というのをみんな共通認識として持っているということだよね。
高坂:うん、中学生はそう言っていたよ。他にもね、中学生ですごく印象的だったことがあって、まず驚いたのが今回初めて中学生が学校案内してくれたの。
藤代:おー!
高坂:今までは先生だったの案内してくれたり、自由に見ていいよと感じだったの。それが、初めて中学2・3年生の子が僕らについて学校案内をしてくれたのね。どうしてかというと、その子たちが所属しているクラブがあって、国際協力クラブというクラブの生徒たちだったわけ。ましてや外国人の僕らが来たわけだからこんなチャンスは無い!と。だからクラブの顧問の先生みたいな人が、授業なんか出てる場合じゃないぞ、それよりも、こっちが大事だと思うって。だからアテンドして欲しいってお願いしてさ。
藤代:へー、凄い!
高坂:これも、授業の一貫みたいなことを先生が言って、だけど当然、母国語がフィンランド語だから、彼らは僕らを英語でアテンドしてくれるわけ。
藤代:うんうん。
高坂:中学2・3年生だけど、ちゃんと学校のことを英語で説明できるくらいの英語力は備わっているし、さっきのような話が聞ける人と聞けない人の違いは何だと思うという質問に対して「んー、こうじゃないかな」ってさらっと返してくるんだよ。
藤代:普段から考えているってことだよね。
高坂:そういうこと!だってね、ハードルがかなり高いと思うんだよね。どうしてかというと、単純に大人だけど外国人相手にQ&Aをするって、それだけでもドキドキしそうだし、ましてや相手は中学生なわけで、外国人の大人が来て、しかも言語は英語で、それをやり取りしていくってすごい。さらっと返してくるってことは、普段から鍛えられている証拠だというのを、質疑応答の内容だけじゃなく、その様子からとても感じるわけ。これは日頃の賜物だなっていうのをとても感じるわけよ。そのあたりがね、日頃からこれやってんだなってとても感じさせられて、そういうことからも衝撃を受けた。
藤代:日常のリアルが見えた感じだね。
高坂:ほんとそんな感じだったよ。僕も普段から中学生と一緒に過ごしてるから実感がある。生徒会やっている子とかもいるけれど、だからといえ流暢に外国の人たちを相手に「んー」とか言いながら「こうじゃない?」って自然と答える。
他にも「先生にはどんなあり方でいて欲しい?」って聞いたらさ「必要なときに手を貸して欲しい」って。
藤代:必要なときに?
高坂:続きがあってね「だけどずっといつもそこには居ないで欲しい」って。その理由は、自分たちでやってみたいからって言っていた。なるほどと思ったんだよね。実際に個別指導で教えている中学3年生がいるんだけれど、その子のお母さんに「たかさんが教えていて何が良いの?」ってこっそり聞いたんだって。それをこないだ面談で教えてくれたんだけれど、「たかさん、ずっと見ていないから」って言ったんだって。ややもするとこの発言は危険なんだけれどさ。個別指導なのにたかさん見ていないって(笑)でも、こうやって(近くで)見ていたら、やっぱり嫌だよね。
藤代:なるほどー!たかさんが生徒だとして、僕がたかさん役だとしたら、ずっと見ているってことでしょ?
高坂:うんうん、そうそう。
藤代:これはやめてくれって?
高坂:そうそう。一旦教えるんだけれど、本人に問題を解いてもらう時間は、席をちょっとずらして別のところに視点をおいておくようにしていて、終わったら声をかけてねと伝える。無言の圧じゃないけど、そういうのはどの国の子も共通しているんだろうなと、その答えを聞いたときはとても思ったね。
藤代:たしかに、そうだよね。小さい子たちって「自分でやりたい」って言うじゃない。「自分でやらせて」って。あれって僕はアピールだと思うんだけれど、ついついやっぱりそれを取っちゃって、僕たちがやっちゃうことってあるじゃない。「自分でやらせて」って彼らは怒りだす。考えずに欲求のままに言っているのだと思うんだけれど、そこは大人になるプロセスにおいてもすごく必要にしていると彼らは思っているということだね。
高坂:思っているらしいよ。彼らはそう言ってた。みんながみんなそうではないかもしれないけれど、複数人に聞いてみて、そういう答えを出していたんだよね。
藤代:最近さ、男の子と女の子の違いみたいなのに興味があるんですよ。
高坂:へー!
藤代:LGBTの友人がいて、男とか女とか言うのが嫌なわけ。男の子でしょって言うのも嫌だし、言われているのも嫌。とはいえ、特性みたいなのはあると思っているわけ。それを改めて勉強したときに、男の子はやっぱりいまのことと本当に一緒で「言ったときに手を貸して欲しい。」
高坂:あー、なるほど。
藤代:サッカーコーチをしていた頃はいちいち伝えちゃってたんだよね。軸足はこうしてとか、ボールはここじゃなくてとか。子どもが何回か蹴ってみて、パパとかコーチに「どうやったら真っ直ぐ転がるの?」って言われたときに初めて僕たちの出番ということを知らなかった。「どうすればいいと思う?軸足をどうやったらやりやすい?」とか伝えてあげられなかったんだよね。当時は「見る」には程遠くて、ぼーっとしていたのかなぁ。そういう関わり方が重要なんだと改めて知ったというか。いまは女の子でも男性性が強い子もいるし、男の子でも女性性が強い子もいるから、それは見極めは難しいかもしれないけれど。
▶後編へつづく
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